業務に無駄が多くて生産性が上がらない、人件費がかさんでしまう…今の業務に課題を感じている方も多いですよね。従来の業務を見直してみると、さまざまな無駄が潜んでいるものです。このような業務の無駄はコストや生産性への悪影響だけでなく、社員満足度の低下にもつながってしまいます。
実際のところ、多くの企業がこういった業務の無駄を取り除くべく「業務改善」の取り組みを行っています。しかし業務改善という言葉を聞いたことはあっても、はっきりとしたイメージが湧かない方も多いのではないでしょうか。
業務改善を成功させるためには、多くの成功事例から学ぶことが大切です。成功事例を知ることで業務改善の具体的なイメージがしやすくなり、自社での取り組みに役立つに違いありません。そこで今回は、業務改善の成功事例やポイントをしっかり押さえましょう。
業務改善とは
不要な作業が発生したり、非効率的なやり方で時間がかかったり…日々の業務には、何かしらの「無駄」が存在しますよね。業務改善とは、従来の業務方法を見直してこのような無駄をなくす取り組みのことを指します。
業務改善の目的は、端的に言えば「QCD」を向上させることにあります。QCDとは、「Quality(品質)」「Cost(コスト)」「Delivery(納期)」という3要素の頭文字を取ったものです。元々は製造業で使われていた概念ですが、今では業種に関わらず企業にとって欠かせない概念となりました。
業務改善によりQCDを向上させる事例には、以下のようなものがあります。
・検査機器の導入により品質を機械的にチェックし、不良品の発生を防止する
⇒Quality(品質)の改善
・複数の作業工程をまとめることにより、製造に必要となる設備の稼働時間を短縮する
⇒Cost(コスト)の改善
・無駄な作業工程の廃止により作業時間を短縮し、より早く納品できるようにする
⇒Delivery(納期)の改善
業務改善の取り組みは、これら3要素のうち少なくとも1つはプラスにつなげる必要があります。とはいえ、品質を改善するためにコストや納期が犠牲になっては、意味がありません。業務改善ではQCDのバランスを意識しつつ、現状を悪化させることなく改善していくことが大切です。
業務改善を行うフロー
実際に業務改善を行う際には、以下5つの手順で進めていくのがおすすめです。
手順1:現状の把握・見える化
手順2:無駄の洗い出し
手順3:改善策の検討
手順4:実践
手順5:効果のチェック
それぞれ、順番に解説しましょう。
手順1:現状の把握・見える化
現状の業務プロセスがどうなっているか把握できていないと、改善すべきものが見えてきません。まずは、現状の業務を細かいプロセスに分解し、業務フローとして書き表しましょう。
また、業務の各プロセスにかかるおおよその時間を計測しておくことも大切です。無駄なプロセスを見つける際に、作業の所要時間が役立ちます。
手順2:無駄の洗い出し
作成した業務フローを基に、無駄なプロセスがないか洗い出します。トータル時間に対して高い割合で作業時間がかかるプロセスは、必ずチェックしましょう。このようなプロセスは無駄が潜んでいるケースが多い上に、改善による大きな費用対効果が期待できます。
また、成果物にミスが発生しやすいプロセスにも注目しましょう。このようなプロセスは、作業方法に問題があるケースが多くあります。しかも、成果物のミスにより手戻りが発生するとQCD全体に悪影響を及ぼす恐れがあるので、改善すべきプロセスです。
手順3:改善策の検討
洗い出した無駄なプロセスに対して、改善策を検討します。検討の際には、以下に記載している「ECRSの4原則」にしたがって、上から順に考えていくのがおすすめです。
観点1:Eliminate(排除) …不要なプロセス自体を排除できないか
観点2:Combine(結合) …関連性の高いプロセスを1つにまとめられないか
観点3:Rearrange(再編成)…プロセスの順序を入れ替えられないか
観点4:Simplify(簡素化) …プロセスの実施方法をシンプルにできないか
詳細は、1つずつ順番にご解説します。
観点1:Eliminate(排除)
昔からの慣例で、不要なプロセスが残っていることも多くあります。最終成果物に直接影響しないプロセスは基本的に不要なので、無くすことを考えましょう。
観点2:Combine(結合)
関連性の高いプロセスが複数あるような場合は、1つにまとめることで効率化することを考えます。たとえば1つの書類を複数人が別プロセスで完成させていくようなケースでは、書類の作成を1人で専任した方が効率的になりやすいでしょう。
観点3:Rearrange(再編成)
プロセスの順序を入れ替えることで、作業の無駄を減らせないか考えましょう。たとえば複数の取引先に向かう営業職の場合、向かう順序を見直すことで移動時間を短縮できます。
観点4:Simplify(簡素化)
プロセスのやり方が複雑になっている場合、シンプルにすることで効率的にできないか考えましょう。たとえば帳票の入力項目を自動チェックするシステムを導入することで、確認の手間やミスによる手戻りを減らせます。
手順4:実践
一通り改善策を検討できたら、現状の業務フローに取り入れて実践しましょう。改善の効果をチェックするために、業務改善後の各プロセスにかかる作業時間も計測が必要です。
ただし、業務フローの変更は作業者への影響が大きいため、慣れるまで作業時間が安定しないことも。ある程度の期間は実践を継続し、作業時間が安定したら手順5に移行します。
手順5:効果のチェック
従来と業務改善実施後のそれぞれについて作業時間や作業精度を比較して、改善具合をチェックしましょう。変更したプロセスはもちろん、直接変更していないプロセスに悪影響が出ていないことも確認が必要です。
もしあまり改善が見られない場合、改善方法に問題があるか、無駄の洗い出しが足りないのかもしれません。その場合は手順2に戻り、無駄の洗い出しから見直していくことをおすすめします。
一般的に出てくる業務改善のアイディア
具体的に業務改善を実現する方法には、さまざまなものがあります。その中でも特にポピュラーなものを、3つご紹介しましょう。
グループウェアの導入による情報共有の効率化
「グループウェア」とは、オンラインで社内の情報共有を可能にするシステムです。グループウェアを使用することで電話やメールと比べて格段に情報共有の手間を軽減でき、人件費削減につながります。チームワークが重視される業務フローの場合、特に効果的な手段です。
書類の電子化によるペーパーレスの促進
見積書のような書類を使用する頻度が高いと、紙の消費量が増えてコストがかかります。たとえばオンラインの見積書作成ソフトなどを使うことで、ペーパーレス化によりコスト削減につながるでしょう。また、紙で扱っていた情報を電子化することで情報の管理効率も上がります。
RPAの導入による定型作業の自動化
RPA(Robotic Process Automation)とは、人間が手作業で行う定型作業を自動化してくれるシステムのことです。このRPAを使うことで手作業による手間を減らすだけでなく、ミスによる手戻りも防止できます。
業務改善に成功した事例その1:ベクター・ジャパン株式会社
「ベクター・ジャパン株式会社」は、自動車などに関連するソフトウェア製品の開発や販売を行っている企業です。こちらの企業では遠方にある取引先との打ち合わせが多く、帰社するためにかなりの時間が無駄になるという課題がありました。そこで業務改善として取り組んだのが、テレワークの推進です。
テレビ電話やチャットができるソフトウェアの導入や、外回り用のスマートフォンの支給が主な取り組みです。社内ネットワークにはVPN認証を導入することで、テレワークでのセキュリティリスクを低下させました。結果として、移動時間を大幅に削減し業務効率を向上できただけでなく、私生活の時間も増えて社員満足度の向上にもつながりました。
業務改善に成功した事例その2:KDDI株式会社
「KDDI株式会社」は、スマートフォンなどの通信サービスを提供している企業です。こちらの企業では事業拡大にともない取引先への発注業務が増え、担当社員の負担が大きいという課題がありました。そこで業務改善として取り組んだのが、RPAソフト「UiPath」の導入による、発注業務の自動化です。
具体的には取引先からの見積書をOCR(光学文字認識)により文字データ化し、内容をチェックして発注システムに入力する、という一連の作業を自動化しました。見積書のフォーマットは取引先により異なるので、開始当初は一部の取引先のみが対象でした。それでも運用開始から2カ月後には、作業時間を1ヶ月あたり約17%も削減することに成功したとのこと。
業務改善に成功した事例その3:熊平製作所
「熊平製作所」は、セキュリティシステム機器の開発や販売を行っている企業です。こちらの企業では納品書や請求書といった書類の利用量がとても多く、紙のコストや管理の手間が課題でした。そこで業務改善として取り組んだのが、書類の電子化によるペーパーレスの促進です。
具体的には、「i-Reporter」と呼ばれる帳票の電子化システムを導入し、すべての書類を電子化しました。その結果、書類の作成や管理にかかる時間を90%以上削減し、大幅なコストカットに成功したのです。
業務改善をスムーズに行うポイント
業務改善をスムーズに行うには、トップダウン(経営陣から現場へ)とボトムアップ(現場から経営陣へ)の兼ね合いが大切です。企業の経営に関わる立場の方であれば、現場からの不満や改善案に対してできる限り耳を傾ける姿勢を持つことを意識しましょう。その一方で、抜本的な改革が求められるような状況では、経営陣が強い意志を持って現場をリードしていくことも必要です。
とはいえ、業務改善の経験が少ない企業では最初からスムーズに業務改善を進めるのは容易ではありません。業務改善を確実に成功させたいのであれば、「業務改善コンサル」に頼るのも有力な手段です。業務改善コンサルは豊富な業務改善の経験を持つスペシャリストなので、迅速かつ確実な成果が期待できます。
弊社ではRPAソフト導入のサポートなど、業務改善するためのお手伝いを行っています。実際に業務改善を実現している企業も少しずつ増えているので、業務の課題を解決したいとお考えの方は、まずお問い合わせください。
さて今回は、業務改善のポイントや事例をご紹介しました。内容を振り返りましょう。
・業務改善とは
⇒従来の業務方法を見直して無駄をなくす取り組み
・業務改善を行うフロー
手順1:現状の把握・見える化
手順2:無駄の洗い出し
手順3:改善策の検討
⇒「ECRSの4原則」にしたがって、順に考える
Eliminate(排除)/Combine(結合)/Rearrange(再編成)/Simplify(簡素化)
手順4:実践
手順5:効果のチェック
・一般的に出てくる業務改善のアイディア
①グループウェアの導入による情報共有の効率化
②書類の電子化によるペーパーレスの促進
③RPAの導入による定型作業の自動化
・業務改善に成功した事例その1:ベクター・ジャパン株式会社
⇒テレワークの導入により移動時間を削減&業務効率を向上
・業務改善に成功した事例その2:KDDI株式会社
⇒RPAソフトの導入により発注業務を自動化し、作業時間を大幅に削減
・業務改善に成功した事例その3:熊平製作所
⇒帳票の電子化システムの導入により、書類の作成や管理にかかる時間を大幅に削減
・業務改善をスムーズに行うポイント
⇒トップダウン(経営陣から現場へ)とボトムアップ(現場から経営陣へ)の兼ね合いを意識
⇒業務改善コンサルに頼るのが迅速かつ確実
このように業務改善の実現方法はさまざまで、成功事例もたくさん存在します。業務の無駄を解消して企業を発展させたいとお考えの方は、ぜひ実践しましょう。