近年、個人の価値観の多様化に伴い、働き方に対する考え方も多様化してきました。企業経営者や人事担当者は、多様化する価値観に対応するために働き方改革をどのように進めていったらよいか考えることが多いですよね。そんな中で働き方改革の事例は、自社でどんなことができるかを考えるうえで参考になります。
この記事では、働き方改革についてふりかえり、「社員が働きやすいと思える職場環境の整備」「女性が活躍できる環境整備、子育てと仕事の両立などができるダイバーシティの推進」「社員のモチベーションと個々の生産性を向上させ、結果的に企業の労働生産性を向上させること」なども解説しています。また、働き方改革はなぜ必要なのか、働き方改革の目指すものはなんであったかなどをもう一度おさらいすることも自社でできる独自の働き方改革を考えるヒントになるでしょう。
そこで今回は、働き方改革でやるべきことを成功させた事例を紹介します。
働き方改革とは
働き方改革とは、社員が良い展望が持てるような環境を整えることです。日本政府と企業が一体となって、従来の日本における働き方を見直し、より今の時代とこれからの時代に合った働き方にするために、多様性と柔軟性のある働き方を選択できるようにするための改革のことを指します。
働き方改革の実現によって、働き手のそれぞれの事情に応じて多様な働き方が選択できる社会を実現して、働き手一人ひとりが今よりもより良い将来展望が持てるようにすることが働き方改革の目指すものです。
働き方改革が必要な理由
働き方改革が、現在の日本のために必要な理由は、社会環境の大きな変化と、働き手の価値観やニーズが多様化してきたことがあげられます。
社会環境の変化の中で働き方改革を必要とする最も大きい要因は、「少子高齢化による生産年齢人口の減少」です。2019年10月1日現在の総務省統計局の人口推計によると、総人口は9年連続の減少、15~64歳人口の割合は59.5%で、1950年以降過去最低となっています。さらに、日本は同様に高齢化がすすむ欧米諸国と比較すると、1980年代までは下位だったのが、90年代に中位となり、2005年からは最も高い水準となり、今後も高い高齢化を維持することが見込まれています。
また、働き手の働き方に対する価値観やニーズも変化しています。例えば、女性の社会進出に伴って、結婚や出産、子育てなどのライフイベントに対応できるような働き方や、高齢の親の介護ができる働き方など、働き方に対するニーズも多様化しています。それによって、個人の価値観が多様化することによってライフスタイルも変化し、働くことに対する価値観も変化しました。
こうした社会環境の大きな変化と、働き手の価値観やニーズが多様化に対応するためには、投資やイノベーションによる生産性の向上や、就業機会の拡大、モチベーションや能力を働き手が十分に発揮できる環境をつくりだすことが不可欠です。それを実現するためには、国と企業が一丸となって働き方改革を推進していく必要があるのです。
働き方改革でやるべきことは
働き方改革でやるべきことは、「労働基準法」に基づいて、労働時間、休日、深夜業等についての規定に従い、「過労死等防止推進法」に基づき、社員の長時間労働を強いられることがないようにする長時間労働の是正や、「パートタイム・有期雇用労働法」に基づき、正社員と非正規社員の間で不合理な待遇がない雇用形態に関わらない公正な待遇の確保をしながら、病気の治療と仕事の両立、「女性活躍推進法」に基づく女性が活躍できる環境整備、子育てや介護と仕事の両立などができるダイバーシティの推進を考慮して、社員の働き方に対する価値観やニーズに対応できる、柔軟な働き方がしやすい職場環境の整備をおこなうことです。
また、社員のモチベーションと個々の生産性を向上させ、結果的に企業の労働生産性を向上させることも働き方改革でやるべきことです。そのためには、人材育成やハラスメント防止対策も必要となります。
働き方改革を中小企業で進める際に、発生しやすい課題
働き方改革を中小企業で進める際に、発生しやすい課題には以下の5つがあります。
「仕事が大量にあるので残業規制の範囲内で仕事をさばけない」
現状では、企業が抱える設備で社員に残業をしてもらうことで、何とか仕事をさばいていた場合、働き方改革で残業の削減を実行する余裕がないので、人手が不足している中で、働き方改革を進めることができない課題があります。
「人手不足のうえ、採用も困難」
ベテランの職員が退職することに、また少子高齢化による人材不足によって、採用も困難なのが現状です。そうすると、働き方改革をすすめるための余裕がなく、働き方改革が進まない可能性もあります。
「労働時間の管理を今までしてこなかった」
今まできちんとした労働時間管理を行ってこなかったため、管理職や社員に定着させるのが困難になるでしょう。そうすると、労働時間把握のための基本的環境の確保が難しいため働き方改革が進みにくくなります。
「長時間労働は美徳であるという風土がある」
日本の企業は、上司が帰るまでは部下は帰らないとか、長くオフィスにいて働いている姿が良しとされる企業風土がありますよね。そのため、残業の削減などの取り組みが浸透せず働き方改革が進まない現象があります。
「効率化のための設備を導入する投資が困難である」
効率化のために最新のシステムを導入することが有効であることは理解できるかもしれません。しかし資金がなく投資できないため、システム導入による業務効率化が困難な場合があります。
代表的な企業の働き方改革の事例
それでは、代表的な企業の働き方改革の事例を紹介します。
株式会社現場サポート
株式会社現場サポートは、働き方改革として、感謝と承認の企業文化を醸成することで、社員が辞めない経営を徹底し、2桁成長を継続しています。株式会社現場サポートは、目の前の利益の最大化する経営を最優先するあまり、ついていけない社員が続出し、多くの退職者が出てしまっているという課題がありました。そこで働き方改革として、具体的には、以下の3つの取り組みを実行し成果を出しています。
- 社内SNSで同僚に対する仕事上の感謝を月に一度(社長は毎日)発信するように推奨をおこない、社内の良好な人間関係を構築し、社員や組織のモチベーションを高める
- 二か月に一度、社員が社長に仕事環境について提案する機会を設ける
- 万が一長期疾病(精神疾患)になっても、安心して働けるように、収入の保障と業務の負担軽減を図る
その結果、利益最優先の経営から脱却することができ、社内の雰囲気が和らぎ、事業実績や生産性が向上しました。
有限会社あぜち食品
有限会社あぜち食品は、女性がライフサイクルに合わせて働くことができる職場環境を実現している企業で、子育てをしながら働くことができる仕組みなどを実践しています。有限会社あぜち食品は、子育て世代のパート社員が主力の会社であるため、子育て世代の社員が安心してモチベーションを維持できる職場環境が重要でした。具体的には3つの取り組みを実行し成果を出しています。
- 子育て世代の社員が安心して働けるように、勤務時間を午前9時から午後4時までに設定し、保育園に子供を預け、お迎えができるように勤務時間を設計
- 年次有給休暇を社員自身が決められるようにすることで、子どもの学校行事を優先できるようにしている
- 定年をなくし、社員の働く意思と力があれば、働き続けられることとしている
その結果、主力である子育て世代のパート社員が安心して生き生きと働ける職場環境を実現しています。
株式会社パワーネット
株式会社パワーネットは、社員の残業を増やすことなく事業拡大を実現した企業です。社員の大半が女性であり、仕事と家庭の両立を実現するためには、家庭の事情などで社員が突然休んだ時でも他の社員が対応できる職場環境をつくる必要があるという考え方から働き方改革を行いました。
たとえば、すべての業務をマニュアル化することで、何かあっても、社員が安心して休むことができる職場環境を実現しています。具体的には3つの取り組みを実行し成果を出しています。
- 全業務をマニュアル化することで、担当職員が休んだとしても、他の社員がマニュアルをみることで業務を代行できる環境を実現した
- 書庫にある資料を整理分類し、社員各自のデスクの引き出しの中の書類の分類保管位置を統一した
- タイムマネジメントを徹底し、社員に仕事を緊急性と重要度によって区分けする意識を浸透させた。仕事が時間内に完了できない場合は、他の社員に協力を得ることで退社時間までに業務を終了させる習慣をつけた
その結果、社員が仕事と家庭を両立できる職が環境を確立し、会社の業績向上にも良い影響を与えました。
自社で働き方改革を導入するときの注意点
働き方改革は推進していかなければならないことですよね。しかしやり方を誤ると、企業の中に浸透せず、成果がみられない結果に終わってしまいます。ここでは自社で働き方改革を導入するときの注意点を紹介します。
残業の原因を改善して残業を減らす
働き方改革でやるべきことのひとつに、長時間労働の是正があります。具体的に推進していくための施策として、プレミアムフライデーや、ノー残業デーなどといった取り組みをかかげ、社員に、仕事を効率的にこなし、残業を減らすように訴えていく方法がよく使われます。
取り組みをかかげることは良いことですが、一方でなぜ残業が起こっているのかという、残業の原因も明確化していかなければなりません。残業の原因を改善して残業を減らすようにしないと、残業を申告できないムードの中で、仕事量は一向に減らず、申告せずに残業したり、業務を自宅でするような事態を引き起こす可能性があります。このため残業の多い社員に、仕事がかたよりすぎていないか、残業を引き起こしている無駄な業務フローはないかなど、残業の原因も明確化し改善しましょう。
社員に働き方改革に伴う変更の理由とメリットをよく理解してもらう
働き方改革は、企業経営者の強い意思表示を社内外に発信し、具体的な施策を実行します。そのなかには、今までの古いやり方から、新しいやり方への変更を伴うことが多くあるでしょう。
トップダウンで行われる働き方改革の新しいやり方への改善は、スタート時点では社員に何らかの負担を与えることが多々あります。たとえば、使い慣れた古いシステムから、最新のシステムに変更するときには、新システムを使うためのスキルを学習する負担があり、業務をするうえでも慣れるまでは、古いシステムの方が使いやすいと感じる方もいるかもしれません。
働き方改革に伴う変更が必要なときには、社員に対し、変更を行わなければいけない理由と、変更することで実現できるメリットを明確に説明して理解してもらう機会を必ず設ける必要があります。そうすることで、変更に伴う負担もポジティブにとらえ、自ら新システムを扱うスキルを早く身につけようとするでしょう。
さて今回は働き方改革でやるべきことを成功させた事例を3社紹介しました。
働き方改革とは、日本政府と企業が一体となって、従来の日本における働き方を見直し、より今に時代とこれからの時代に合った働き方にするために、働き手が抱えるそれぞれの事情や、働き方に対する価値観に対応した、多様性と柔軟性のある働き方を働き手自信が選択できるようにするための改革です。
株式会社現場サポートは、働き方改革として、「社内SNSの活用」「社員が社長に仕事環境について提案」「万が一長期疾病(精神疾患)になっても、安心して働けるように収入の保障と業務の負担軽減を図る」ことによって、利益最優先の経営から脱却すすことができ、社内の雰囲気が和らぎ、事業実績や生産性が向上しました。
有限会社あぜち食品は、働き方改革として、子育て世代の社員が安心してモチベーションを維持できる職場環境整備などを行い、主力である子育て世代のパート社員が安心して生き生きと働ける職場環境を実現しています。
株式会社パワーネットは、働き方改革として、「全業務のマニュアル化」「書庫にある資料を整理分類」「タイムマネジメントの徹底」を行い、社員が仕事と家庭を両立できる職が環境を確立し、会社の業績向上にも良い影響を与えてます。
働き方改革を中小企業で進める際には「仕事が大量にあるので残業規制の範囲内で仕事をさばけない」「人手不足のうえ、採用も困難」「労働時間の管理を今までしてこなかった」「長時間労働は美徳であるという風土がある」「効率化のための設備を導入する投資が困難である」といった課題が発生しやすく、導入の際には、「残業の原因を改善して残業を減らす」「社員に働き方改革に伴う変更の理由とメリットをよく理解してもらう」点に注意を払わなければなりません。
ぜひ、働き方改革の事例を参考に自社でできる自社独自の働き方改革を推進しましょう。弊社でも働き方改革のお手伝いをしていますので、まずはご相談ください。
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