携帯電話の普及により、デジタルとインターネットが身近でなくてはならないものになりましたよね。さらに近年は新しいIT技術を活用した事業形態、つまりデジタルビジネスが次々生まれています。
そして、実店舗や現場中心の業態でも、デジタルに対応しないと顧客が減少する、業務が非効率になり競争力が低下する、などが現実化しています。今や、デジタルに対応していない企業は変革を迫られているのです。
そのような中で、デジタルビジネスに対して危機感を持つ人もいるかもしれません。しかし、業務のシステム化に道筋をつけられても、デジタル時代の自社ビジネスのありようは模索中だという企業も多いでしょう。
そこで今回はデジタルビジネスの基本から他社事例など、現代のビジネス環境で生き残るためのヒントをお伝えします。今のところデジタルビジネスのイメージがつかめていなくても、まずはこの記事を読んで情報を集めるところから始めましょう。
デジタルビジネスとは
デジタルビジネスとは、IT通信技術を活用した新しい産業や業態のこと。IT事業者だけでなく、一般企業による新たな収益モデルの創出も含みます。また、デジタルビジネスの場合は既存業務の電子化・システム化による効率化やコスト削減とは違い、単独で収益化できるような自律的な収益が見込めなくてはなりません。
今や一般社会にデジタルが浸透し、スマホやSNS、ネット通販、検索サービスなど、デジタルビジネスは人々の生活基盤の一部になっていますよね。さらに、音楽配信サービスやクラウド、電子決済など様々なサービスが次々と生まれ、既存の産業や業態の脅威になっています。つまり、デジタルビジネスが既存の市場を揺さぶるようになるでしょう。
デジタルビジネスのトレンド
コンサルティング会社のアクセンチュアは、先進のデジタル企業が取り組む5つの技術トレンドを指摘しました。これらのポイントは、一般的な企業にとっては十分に参考になるでしょう。
- パーソナライズ
- モノからコトへ
- プラットフォーム
- ビッグデータの活用
- 人とシステムの協働
それぞれについて、例をあげて説明します。
パーソナライズ
デジタル化により、一人ひとりの顧客に最適化したサービスの提供が可能になります。個々の顧客の好みや事情に応じたサービスの構築と、高い顧客満足度を実現できるでしょう。ただし、現在各国で個人情報収集に対する規制が敷かれつつあるので、その扱いには気をつけましょう。
モノからコトへ
近年はモノの販売からIoTを活用したサービス、「コト」の提供に移行する企業が出てきています。そのような企業はIoTによるモニタリングデータを元に、利用者がモノを介した利便性を提供します。
将来的にはITを活用した供給の最適化から、IoTでモノを利用して得られる「コト」を効率的に獲得できるようになるでしょう。たとえば機器の保守管理において、IoTで故障の兆しを検知して機器停止を未然に防ぎ、ダウンタイムなしの対応も可能になるかもしれません。
プラットフォーム
デジタルビジネスでは多くのユーザーを獲得すると、成長力と収益力が飛躍的に増大します。特に多くの企業にとって競争の場となるプラットフォーム業態は、多くの顧客を呼び込み、さらなる利便性と安定した事業化が見込めます。
ビッグデータの活用
コンピューターの処理性能の向上や高速デジタル通信、クラウドといった最新のIT技術により、あらゆるデータの取得とその有効活用が進んでいます。大量の過去データを元に需要予測や分析を行い、事業戦略の立案や推進・展開を行う事例が国内外で見られます。
人とシステムの協働
労働力不足に悩む日本でなくても、世界的に人とデジタルシステムとの協働や運営に関する課題が指摘されています。たとえば、ソフトウェアロボット(RPA)やAIを活用して、人の最適な業務分担と上手な運営方法が模索されています。今後はRPAをはじめとするデジタルレイバーや自動化システムの普及が進み、新たなる労働力として受け入れることが当たり前になっていくでしょう。
デジタルビジネスの成功事例
ここで、先進的な企業によるデジタルビジネスの事例を紹介しましょう。多くの企業の参考になるように、IT専業ではない一般の事業会社の成功事例を取り上げます。
GEの製造業のサービス化
【概要】
技術:デジタルツイン
要点:デジタル活用による保守管理の最適化
変化:モノからコトへ
米国の総合電機メーカーのGEは、飛行機エンジンを販売するのではなく時間ごとのエンジンの出力量に応じた課金制を導入しました。同社はデジタルツインを活用し、自社製エンジンをリアルタイムにモニタリングする仕組みを構築、飛行機が目的地に到着する前にメンテナンスが必要な箇所が検知できるようにしました。ちなみにデジタルツインとは、IoTにより遠隔で現物の状態が把握できるシステムのことです。
以前は空港に到着しないと修繕箇所が判明せず、その分のタイムロスがフライト運航の足かせに。GEのサービスを利用することにより、航空会社はフライトの遅延リスクを回避でき、ムダな労力やコストを削減できました。
このように製造業に限らず小売業も含めて、将来的には「モノ」の提供から、データによる「サービス」提供や「コト」への対応をしていくことになるでしょう。
AIとデータ活用で需要を喚起するNetflix
【概要】
技術:AI、ビッグデータ
要点:レコメンド機能による顧客の不便を解消
変化:パーソナライズ化による顧客満足度向上、収益の安定化
Netflixは、月々定額でいつでもどこでもコンテンツを視聴できるようにした動画配信サービスです。Netflixが人気なのは海外ドラマや映画、オリジナル作品の豊富なコンテンツを定額で視聴できるだけではありません。顧客が好みそうなコンテンツを次々におすすめして、顧客を飽きさせない仕組みがあるからです。
コンテンツビジネスにおいては、ユーザーがコンテンツを「見つくした」「消費した」と感じると契約をやめてしまいます。さらにネットにはモノや情報があふれ、その中から自分に合うものを見つけるのはとても難しいですよね。しかし、そんな中でNetflixはユーザーの視聴傾向をAIで解析し、顧客にハマるコンテンツをおすすめして、サービスを長く利用してもらうことに徹しています。
成熟市場では競合が多く、嗜好の多様化・細分化とともに安定した収益の獲得は難しくなってきています。モノやサービスの提供において、ITを活用して顧客が利用しにくい点を取り除くことで、差別化と安定的な収益獲得に向けられるでしょう。
デジタルビジネスにおける課題
デジタルビジネスの展開にあたって課題となるのは「人材」「リスク」の2つです。
デジタルビジネスに必要なのは、新しい価値創出と変革を担える人材です。またデジタルビジネスには間接部門の構造改革や経費削減とは違い、収益化を目的にしているため事業化の難易度がぐっと上がるのはいうまでもありません。
人材の確保とリスクを抑える手段として、立ち上げ時期にIT活用に長けた人材を期間限定で登用し、開発スピードと事業化の精度を担保するという方法もあるでしょう。また事業を立ち上げる際には副業人材の活用や、既存客に対するモニター導入と改良等、コストを抑えつつも小さく成功を重ねていく方式も一つの手です。
デジタルビジネスの取り組みで重要なポイント
今後、デジタルビジネスに取り組んだり、事業の維持や成長を図っていくには、「IT活用情報の把握」「人材計画」が重要になります。
まずデジタルビジネスの構想を立てようにも、実際にどんなIT技術があってどう活用できるのか、具体的にイメージできないと難しいですよね。それにはアンテナを張り、最新のIT技術や企業の活用動向を知り、将来的な事業展開に生かしていきましょう。
また、いざデジタルビジネスを始めたり、軌道に乗せるにも人材が重要になります。デジタルビジネスをパイロット事業から本格化させるには、変革の意図を理解し組織展開できるリーダー職が必要になり、さらに既存の従業員の配置転換ができるかもカギになってくるでしょう。
さて、今回はデジタルビジネスの基本から他社事例など、現代のビジネス環境で生き残るためのヒントをお伝えしました。
デジタルビジネスとはITを活用した新しい事業形態のことで、以下のような5つのトレンドが見られます。
- パーソナライズ :「個」客対応による満足度アップ
- モノからコトへ :売り切りから「コト」の利便性を提供
- プラットフォーム :ユーザーがユーザーを呼び込み、規模拡大が加速
- ビッグデータの活用 :大量データで効率的な事業展開
- 人とシステムの協働 :デジタルレイバーと人の分業・調整
デジタルビジネスの成功事例に、製造業のサービス化の転換を果たしたGEや、最適なコンテンツを提示して顧客満足度を維持するNetflixがありました。いずれの企業もモノやサービスを利用する際の利便性の提供を最新のITを活用し実現しています。
【デジタルビジネスにおける課題】
- 人材 :既存業務とは違った適正が必要
- リスク :収益化できない可能性
【デジタルビジネスに取り組むポイント】
- 情報把握:最新技術や活用事例を知って生かす
- 人材計画:人材登用・配置転換を考慮
デジタルビジネスは脅威でなく、世の中の趨勢であり、いずれどの会社も乗り出すことになるでしょう。すぐに解決が必要な課題ではありませんが、取り組みはじめる企業が少しずつ出てきています。まずはRPAなどの業務効率化ツールを導入して着実に足元を固め、その後はITを活用したデジタルビジネスにシフトしましょう。
弊社では、そんなRPAについて導入サポートを行っています。デジタルビジネスに負けない企業を作りたい、とお考えの方はまずお問い合わせください。