最新のIT技術を保有する「DX企業」、自分たちの企業もなりたいですよね。しかし、このDXに対して、どうやって進めるべきか、その方法に迷う企業も多いのが現状です。
DXを成功させるには技術やツール選択だけでなく、事業戦略の策定や組織編成など、広い視点で取り組む必要があります。多数のITエンジニアを抱え、多くの企業のDXを実現させている大手IT企業の取り組みを知りたいでしょう。世界最先端のITの知見を持つDX企業の動向を見れば、自社のDX推進のヒントも得られるに違いありません。
この記事では、国内外の代表的なDX企業とその戦略、企業がDXに成功するポイントを簡単にまとめました。先端技術を扱うIT企業の動向を知り、DX推進に活用しましょう。そこで今回はDX企業についてお伝えします。
DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは
DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは、画期的なIT技術やサービスが人々の習慣や行動を変える現象を指します。また、ITが人々の生活に浸透した現代では、古臭いITシステムの刷新も、人々の習慣をがらりと変える「DX」に似た効果を持ちます。たとえば、経理処理にRPAを活用すれば、社員は毎月末の残業に悩まされることがなくなり、自由に過ごせるようになるでしょう。
DX企業とは
この記事でいうDX企業とは、主に「DX支援ベンダー」の意味です。富士通は自社を「DX企業」と定義し、企業のDX支援事業を強化するとしています。またDXはITシステムの近代化も意味するため、派生的に「社内でDXを実現させた企業」も「DX企業」に含まれるでしょう。
次に、国内外で最先端のIT技術を提供する代表的なDX企業を3社紹介します。
DX企業の代表例:富士通
日本の大手ITベンダーの富士通は、DXビジネスに注力すべく、トップが旗振り役となって社内の変革を進めています。2019年に富士通は市場ニーズに対応するべく、自社を「IT企業」から「DX企業」へと転換する方針を発表しました。国内のIT市場が縮小する中、老朽システムの更改ニーズが堅調なこと、AIやIoTなど最新のITに対する企業の投資意欲の高さを見て、収益向上のためDXベンダーに舵を切りました。
【DX企業に向けた富士通の方針】
- 主要なDX領域にリソースを集中
- 社長は「C”DX”O(最高DX責任者)」として社内改革を主導
- 独立組織かつ新しい人材によるDXマルチベンダー
富士通はハード・インフラとソフトウェア両方のベンダーであり、企業のDX推進のため、AIや5G、クラウド、IoTなど7つのIT分野に注力しています。トップ主導によるDX事業の推進と外部人材の招へい、独立組織かつ高度なIT人材の獲得により、実効性のあるDX事業の構築に努めるもようです。
なおDX専業の新子会社は、富士通以外の製品も取り扱うマルチベンダーになるとのこと。富士通は真のDXは既存の技術や製品にとらわれず、新しい発想の必要性を主張しています。これらの施策により、富士通は2022年にDX分野で3,000億円のビジネス創出を目指しています。
DX企業の代表例:NTTデータ
国内大手ITベンダーのNTTデータは、国内市場の頭打ちを見込んで、国際市場に進出し「グローバルトップ5」企業を目指しています。海外でもDX投資が活発なため、同社はその巨大な市場に食い込む意欲は満々。2018年には連結売上高2兆円と、海外売上比率を50%にするとの目標を掲げています。
国際展開にあたり、NTTデータは数々の国の企業をM&Aして子会社化、人材とノウハウを合わせて吸収し、攻めの姿勢をとっています。また、DX案件獲得のために国際企業と直接競争せず、AIやIoTなどの成長分野や、クラウドの新規案件で突破口を開く戦略をとっています。さらに不足する高度なIT人材と知見をまかなうため、DX専門技術者の育成とノウハウ集積を目的とした「CoE(センター・オブ・エクセレンス)」を設立、さらなる市場開拓にのぞむとのこと。
この育成施設の開設の成果として、グローバル企業への迅速な提案と受注獲得につながりました。そのうえ、NTTデータは画期的な体制刷新を行い、従来は国内3つの業種と海外事業の計4つの事業体制だったのが、国際的な地域別に3つの事業体制に再編。こういった基礎固めにより、本格的な海外シェア奪取の準備が整ったといえるでしょう。
DX企業の代表例:マイクロソフト
ここまで国内のIT企業がDX企業化する取り組みを見てきましたが、今度は海外のマイクロソフト社のDX推進事例を紹介しましょう。
マイクロソフトはOSや文書ソフトのライセンス販売を主力とし、高いシェアと独占的なライセンス販売で巨額の利益を得ています。これまではOSのセキュリティアップデートはあったものの、ユーザーは原則古いソフトを廃棄し、有償ライセンスを改めて購入する必要がありました。
ただ、インターネットやスマホの普及、Google、Amazon、Facebook、Appleを始めとした「GAFA」の出現により、マイクロソフト社の勢いにも陰りが出てきました。結果的にマイクロソフトはクラウド事業への転換というDXを図りました。
クラウド事業は短期の更新制なので、長く使ってもらうためには顧客との信頼関係を築き、提案もしていかなくてはなりません。この転換が社風をガラリと変え、Apple社のような競合やオープンソースソフトの提供者とも提携・協業するにいたっています。そして今はかつての勢いを取り戻しつつあり、GAFAと拮抗するまでになっています。
マイクロソフトは、世界中で10億台以上あるWindows 10搭載のパソコン、モバイルアプリやゲーム等も合わせれば、少なく見積もっても10数億人のユーザーを抱えています。この顧客群を自社で独占せず、他社にも開放して使ってもらえれば高い相乗効果が見込めるでしょう。しかも、マイクロソフトは最先端かつ世界トップクラスのIT技術を多数所有し、今後の大きな飛躍も夢ではありません。
DX企業の例からわかる成功のポイントとは
国内と海外の代表的なDX企業を見てきましたが、これら3社の例からわかるDXの成功ポイントは以下のとおりです。
- 市場対応と自社の強みに集中特化
- 組織再編/専門人材の招へいと育成
- 協業による顧客満足度向上と事業の成長
AIやIoTなど、社会のデジタル化はいまだ急速に進行しています。そのような市場に対応するには、DX推進に加えて自社の強みに集中特化しなくては利益を獲得できません。市場が飽和状態であれば、海外進出など、今までの商圏の拡大に努めるのも一つの方法です。
DXを成功させるには、技術導入だけでなく、DX推進に適した組織への再編が望まれます。また、他社との協業によるシナジーを生むことができれば、さらなる事業成長も見込めるでしょう。
さて、今回はDX企業についてお伝えしました。DXとは人々の生活習慣を大きく変える画期的なIT技術やサービスを指します。しかし、古いシステムによる不便の解消や生活向上、働き方改革もDXといえるでしょう。
近年、大手ITベンダーは市場変化に対応するため、「DX」サービスに重点を置くようになっています。DX経験値の高いIT企業の取り組みに注目すると、自社のDX推進のヒントが得られるかもしれません。
【DX企業の取り組みと成功ポイント】
- 市場対応→自社の強みを生かし、必要な技術を活用
- 組織づくり→DX用に再編、人材招へいや育成
- 他社連携や協業→顧客満足度と事業成長
DX企業の動向は、いずれ市場の傾向として現れてきます。つまりDX企業や最先端のITの状況を知ることで、市場動向を予測したり自社戦略策定の参考にできるでしょう。
現在DX推進が必要な状況であれば、現行のDXに詳しいITコンサルタントに相談しましょう。