経営改革の推進プロジェクト、もしくはRPA等のシステム導入で必要に迫られて、「業務プロセス改善」について考えるようになった人もいますよね。具体的な適用イメージをつかみたいと思っている人もいるでしょう。
会社の業務改善プロジェクトや、システム導入の検討段階にあれば、ひとまず業務プロセス改善の概略を押さえてから本格的に取り組む必要があります。そのため、業務プロセス改善の基本的な流れとノウハウを一通り把握しておけば、とまどうこともありません。さらにプロセス改善の効果を高めるポイントを知っておくと、プロジェクトを成功させやすくなります。
そこで今回は業務プロセス改善の基本について、事例も交えてわかりやすくお伝えします。
業務プロセスとは
業務プロセスは「ビジネスプロセス」とも称し、経営目的のために実施される活動(つまり業務)の一連の流れを指します。一般企業であれば経営上の主たる目的は利潤追求となり、メーカーやサービス業など業種により具体的な業務内容は異なります。
業務プロセスの基本的な特徴をまとめると、以下のような点になります。
- 「インプット」→「処理」→「アウトプット」
- 複数の業務の集合体
- 経営要素(ヒト、モノ、カネ、情報)の活用
「業務プロセス」という語感から個人や部署レベルの業務手順を示すと考えがちですが、実際は会社を大きく見渡したいくつもの業務の連鎖を意味しています。しかも事業を運営するには、さまざまな業務を行わねばなりません。営業や仕入、製造、商品管理、販売、総務等の各部門の業務プロセスは俯瞰すると有機的なひとつながりの流れになり、または間接的なつながりを持ち、互いに関連しています。
なぜ、業務プロセスは改善される必要があるのか
業務プロセスとは経営目的のために編成されるもので、その改善が必要な状態とは、すなわち現行プロセスと本来あるべきプロセスにギャップが生じている状態です。企業が業務プロセスの改善を検討するのは、さまざまな経営課題の解決手段に有用と考えるからです。業務プロセス改善に取り組むことにより、例えば以下のような課題を改善に向けていけるでしょう。
- 内外の環境変化に対応
- 属人業務の標準化による組織力強
- 部分最適→全体最適による効率化
- リソースの最適配分
- 品質向上
- コンプライアンス強化、リスクマネジメント
それぞれの項目について、具体的に説明します。まず、業務プロセス改善とはすべての仕事の流れを変えることなのか、と身構えがちですよね。実は、業務プロセスの改善は今までの限られた業務のやり方を変えることでもかまいません。各会社には経営理念など経営目的の大枠がありますが、それにつながる効果が得られればよいのです。一歩一歩取り組み、効果を上げていきましょう。ここで、業務プロセス改善がイメージできる事例を紹介します。
ある小売企業では生産性向上を目的として、店舗オペレーションの再構築に取り組みました。具体的にはマニュアルの整備と運用改善に着手し、作業効率の大幅アップを実現しました。今までは標準作業のマニュアルがあっても内容が更新されず、うまく活用しきれていませんでした。
マニュアルのデジタル化により、スタッフに適切な閲覧環境を提供し、紙面では無理だったマニュアルの適時作成と更新が可能になりました。また、マニュアルの構成と内容にも改良を加えて作業の標準化を進め、生産性を向上させています。たとえば、人手が取られる品出し作業の時間をわずか3分の1に短縮できた店舗もあるとのこと。
経営課題の解決のため、どこに手を入れるべきかの見極めにセンスや経験が必要だったり、組織的な展開が必要となりますが、業務プロセス改善が奏功すれば大きな効果が見込めるでしょう。
業務プロセスを改善するにあたって、やるべきこと
業務プロセスの改善は手間がかかるうえ、会社全体に影響が及び、やるからには失敗は避けたいですよね。業務プロセス改善にあたっては、以下を考えて取り組むとブレが生じにくいです。
- 目的・対象の共有と集中管理
- 評価尺度の設定
目的・対象の共有と集中管理
業務プロセス改善を経営改善の手段として検討しているなら、メンバーは解決したい経営課題を何らかの形で認識しているはずです。しかし、プロジェクトの目的や対象をしっかり共有しないと、各自バラバラに改善活動を行い、下手すると空中分解する恐れがあります。
まずはじめに現在抱える課題に対して、どの業務を対象とし、実現手段はどうするか、といった切り口(方向性)を定めましょう。そして施策の統一性を重視し、それぞれの部門に再構築を任せず、集中管理体制で部門間の整合性を担保するほうが、部分最適におちいらず、成果をコントロールしやすいでしょう。
評価尺度の設定
いざ業務プロセス改善と旗を振ってみても、目標や効果がはっきり見えないものには協力しにくいですよね。プロセス改善策の実行前には、現行と目標の標準値や効果量(率)などの数値目標、または定性目標を定め、施策後どれほど効果があったかの評価尺度を設定します。
【評価尺度の例】
- リードタイムの○%減少
- 差し戻しゼロ
- 属人作業の標準化・複数対応によるサービス提供時間の拡大
こういった評価尺度があれば、ただ突き進むことにならず、全社展開の参考にしたり、軌道修正することも可能になるでしょう。
業務プロセスを改善する3つのステップ
業務プロセス改善の手順は、以下の3つのステップになります。
- 課題・現状分析
- 対象範囲の決定、施策立案、手段選定
- テスト導入と本格展開
課題・現状分析
プロセス改善により課題の解決を図るつもりならば、具体的な施策に落とし込むための詳しい分析が必要です。生産性向上を目指すにしても、情報共有の問題なのか、業務分担の問題なのかなど、いろいろな改善ポイントがあります。課題の原因や、問題となるプロセスは一つとは限らないため、解決に大きくつながるものを絞り込みましょう。
対象範囲の決定、施策立案、手段選定
次に、分析により絞り込んだ改善が必要なポイントはどの業務プロセスと要素で発生しているのか、その範囲を特定します。そしてさらに具体的な改善対象となる工程、要素を決め、それに対してどう組織的に取り組み、どの手段を使うか検討します。工程や要素の再編成、手段の採用に関しては、費用対効果や定量・定性的な評価尺度を考慮して、どれに優先的・重点的に取り組むか決めていきましょう。
テスト導入と本格展開
やるべきことと、目標、評価基準を定めたら、実行に移ります。一気に進めるよりも一部門からテストしたり、当初はスケジュールに余裕をもたせて、徐々に展開規模を拡大します。
展開方法もたとえば上位工程から開始すれば、後工程に控える部門が楽になり、プロセス改善活動の理解と協力も得られやすいでしょう。改善実施後に必要であれば評価を行い、今後に生かします。改善活動で得られた実績も用いて分析を行い、さらなる改善や継続・展開等、次につながる施策を決定します。
業務プロセスの改善効果をグッと高めるポイント
業務プロセス改善の効果を高めるには、3つのステップを適切に行うだけでなく、ITをうまくプロセスに組み込むことがポイントです。ITツールにはさまざまあり、目的や用途にぴったりハマるものを選んで活用できれば、今とは段違いの効率アップも夢ではありません。
ITが業務プロセス改善で大きな成果を上げられる分野は、主に事務です。事務は事務員のほか、営業や受付、技術職、管理職など多数の従業員が行うため、ここを効率化することでマンパワーを生産性向上にあてられるでしょう。
事務作業の性質に応じてITツールを使い分け、プロセス改善の成果向上に振り向けましょう。
事務の性質 |
例 |
最適なツール |
一定の手順に沿った単純作業 |
データ取得や転記入力 |
RPA |
低頻度・専門性の高い事務 |
人事管理・年末調整 |
クラウドシステム |
煩雑な付随事務 |
各種申請業務、名刺・顧客管理 |
クラウド / 専用特化アプリ |
定型・単純なパソコン事務は自動化ツールのRPAをおすすめします。うまく設計すれば繁閑で激しい差がある労働時間の平準化、待機要員の削減など作業負担を大きく軽減します。
入退社手続きなど、低頻度で専門性が必要な業務は習熟するのも制度変更に追いつくのも大変ですよね。最新情報が常に反映されるクラウドシステムをプロセスに組み込めば、担当者も楽になります。
業務に付随する事務負担を削減できれば、担当者は主たる業務に集中でき、生産性も高められるでしょう。経費精算や名刺管理などの細かい事務、また稟議申請や回覧業務は紙の書類よりクラウドシステムに移行すると格段にスムーズになるはずです。
ほかにも、業務プロセス改善に有用なITツールの選定・利用法について知りたいなら、ITの業務コンサルタントと相談しましょう。自社の業務プロセス改善に適したITツール選びに迷っているなら、専門家と相談するのも有効です。ご興味があればぜひお問い合わせください。
さて、今回は業務プロセス改善の基本について事例も交えてお伝えしました。
業務プロセスは「ビジネスプロセス」ともいい、経営活動(つまり業務)の一連の流れを指します。業務プロセスの改善は、さまざまな経営課題の解決の手段として有用です。
【実施前の準備】
- 目的・対象の共有と集中管理 :部分最適を回避し成果を担保
- 評価尺度の設定 :指標管理で戦略決定・修正を柔軟に
【業務プロセス改善の3つのステップ】
- 課題・現状分析 :課題と問題プロセスの絞り込み
- 対象範囲決定、立案、手段選定 :改善対象の決定・優先度の評価
- テスト導入と本格展開 :小規模運用から本格展開がベター
業務プロセス改善の効果を高めるコツは「ITの活用」です。業務プロセスの一部をシステムに任せれば、今まで悩まされていた業務負担が驚くほど軽くなることもあります。
生産性向上は一人ひとりの努力も大切ですが、組織的なプロセス改善で大きく向上させることができます。さらに細かい事務作業をシステム化すると現場にも喜ばれるので試す価値があります。プロジェクトの成否はやはり人に左右されるので、うまくコミュニケーションを取りつつ無理なく進めましょう。
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