2020年4月に働き方改革の重要な施策、残業時間の上限規制が中小企業に適用されましたよね。今や働き方改革は、今や大企業だけでなく中小企業も必須の課題となっています。経営上のさまざまな制約があるなかで、このような働き方改革を中小企業が達成するには一定の社内改革が必要になるでしょう。
しかも、働き方改革の中小企業の影響はまだまだ続きます。残業抑制対策を実施しつつ、これから新たに始まる施策にどう対応していくべきなのか、検討中の企業の方もいるはず。ここで改めて働き方改革と中小企業が対応すべき事項を事例も含めて解説します。ぜひ、記事を読んで確認しましょう。
そこで、今回は働き方改革についてのおさらいと中小企業が受ける影響や、実行すべき対策とそのポイントをお伝えします。
働き方改革とは
働き方改革とは、2016年に安倍内閣が打ち出した経済対策の一つ。日本の生産年齢人口は20世紀末にピークを迎え、それ以降は減少しその傾向はますます顕著になっています。そこで政府は「一億総活躍社会」の掛け声のもと、労働参加率を少しでも上げて国内の労働力を確保しようとしています。その施策として、働き方改革による人材定着率の向上がありました。
政府は労働参加率の向上のため、以下の3つを目的とした各種の施策を実施しています。
- 長時間労働の是正
- 多様で柔軟な働き方の実現
- 雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保
とはいえ、働き方改革は大企業だけのものだと考えがちですよね。実は、働き方改革は中小企業にとっても必要なものです。なぜなら労働人口の減少により、すでに2014年から長らく求人数が求職者を上回る事態が続き、現在でも未だにその状態を保っています。労働市場の逼迫は一時的に緩んだのは事実ですが、国内人口の減少は避けられません。
つまり、いずれ遠くない将来に企業が再び労働力の確保に悩まされる可能性が高く、特に人材不足に陥りがちな中小企業にとっては解決すべき問題になるに違いありません。
「働き方改革関連法」の改正内容
働き方改革の政策実現のため、政府は労働関連の法律を改正し順次施行されています。働き方改革法の主だった改正内容と中小企業への適用タイミングは以下のとおりです。
中小企業が働き方改革により受ける影響
国家施策である働き方改革は中小企業の経営にどんな影響を及ぼすのかは、以下のような点があります。それぞれ、簡単に解説しましょう。
- 人件費増加
- 労務管理の負担と費用の増加
- 違反事案を出すとイメージダウンの可能性がある
人件費増加
労働基準法により「月45時間、年間360時間の残業規制」「有給休暇の強制取得」が義務づけられ、それによってマンパワーが不足する場合は、新たに人を雇う必要があります。昨今の労働市場から考えると、パートやアルバイトであっても賃金水準が上昇傾向にありますよね。このため、中小企業は残業抑制と賃金上昇による人件費の増加に対応を迫られるでしょう。
労務管理の負担と費用の増加
法律で残業の上限規制と罰則が設けられたため、企業は必ず遵守しなくてはなりません。労働時間の管理を徹底するため、労務管理をより厳しく行う必要があります。それでは、労務管理の手間とコストが増える中小企業も出てくるはず。さらに残業抑止と有給取得で不足する人員を補充すれば、ますます管理コストがかかる可能性があります。
違反事案を出すとイメージダウンの可能性がある
労務管理体制が弱いまま、働き方改革が中小企業に適用されてしまうと、法令違反を起こしてしまう恐れもあります。たとえ違反が担当者の認識の甘さやマンパワー不足が原因だったとしても、企業のコンプライアンス違反には厳しい目が向けられ、「ブラック企業」のレッテルや企業イメージの毀損が起こります。
中小企業が働き方改革のためにやるべきこと
働き方改革を中小企業がしっかり実行していくには、以下の対策が必要になってきます。
- 業務効率化
- 計画的な労務管理と確実な勤怠管理
業務効率化
働き方改革が適用されたら、今まで残業でこなしていた業務をもっと短時間で、またできるなら人を増やさずにうまく回す必要がありますよね。それには、業務の効率化が必要です。組織再編のほか、ITツールを活用して従業員の負担を軽減しつつ、業績も確保していく手段を検討しましょう。
計画的な労務管理と確実な勤怠管理
労働時間が削減されるため、人員配置や適切な業務割当など、計画的な労務管理がより求められます。また、一人ひとりの従業員の勤怠管理をよりしっかり行わなくてはなりません。
紙のシートやタイムカードでは勤務時間の把握や集計に手間と時間がかかり、実態が正確につかめないこともあります。多様な打刻に対応するクラウドの勤怠管理システムなら勤務状況をリアルタイムに把握できるでしょう。さらに給与システムと連携可能な労務管理システムを活用すれば、働き方改革にかかる中小企業の管理負担を軽減できます。
中小企業における働き方改革の成功事例
ここで、働き方改革に中小企業が挑戦した先行事例を紹介します。
小型モーター・ポンプの製造販売を行う草津電機株式会社(社員75名)は、政府の働き方改革の政策表明に先行して、労働環境の改善や業務効率化に取り組んでいます。2016年度と3年前の状況を比べると、月々の残業時間は平均10時間から4.4時間に短縮され、年次有給休暇の取得状況も約2日の増加とかなり改善されました。
同社が実施した主な施策は以下のとおりです。
目的 |
内容 |
長時間労働の抑止 |
ノー残業デーの実施 |
月中の残業時間の把握と警告 |
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残業の事前申請制 |
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締め時間の設定と他部署の応援 |
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休暇の取得促進 |
計画的な年次休暇付与(5日間) |
半日休暇制度 |
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業務効率化に向けた環境整備 |
工場のレイアウト見直し・ラインの自動化 |
外部コンサルタントを活用した業務改善 |
このように実効的な残業抑制には、残業の承認制や月内の進捗把握といった管理が必要になります。また、休暇の取得促進策として半日休暇制度を取り入れるのもポイント。
さらに、業務効率化には作業環境や業務プロセスの改善が欠かせません。省力化に有用な業務の自動化は、設備導入だけでなく、ITツールの活用によっても実現できます。
中小企業の働き方改革の実行ポイント
働き方改革を中小企業が成功させるポイントとして「ITシステムの活用」「組織対応への移行」があげられます。それでは、そのポイントについて解説しましょう。
ITシステムの活用
残業時間を削減しても確実に業務を回したり、また労務管理を確実に行うには、システムを活用するほうが早く処理できミスも起こりにくいです。適切なITツールを使えば、業務にかける時間や従業員の負担を削減できます。さらにシステムで情報を共有化すれば、自社拠点にしばられず業務を効率的に行えるでしょう。
組織対応への移行
より少ない労働時間で業務を遂行するには、個々に「点」で対応するよりも組織的な「面」対応が現実的です。現在でも優秀な人材の獲得競争は厳しく、能力・意欲の高い従業員を選抜育成するにも限界があります。そうなると、社内の仕組みづくりが必要になるに違いありません。
たとえば、業務や顧客に対しては複数担当制を原則としたり、外部部署からの柔軟な業務応援やシフト制などの人員配置の最適化、多能工化も有効です。
さて、今回は働き方改革と中小企業が受ける影響や、実行すべき対策とそのポイントをお伝えしました。働き方改革は、関連法令の施行がすでに開始されたものもあれば、これから中小企業に適用されるものもあります。
働き方改革により中小企業が受ける影響は主に3つです。
- 人件費増加 :残業規制による労働力不足
- 管理負担と費用の増加 :罰則規定ありのため厳重な対応が必要
- 違反事案はイメージダウン :「ブラック企業」のレッテル
中小企業が働き方改革を断行するには、以下の対策が必要です。
- 業務効率化 :時間がなくても現行業務を維持するために必須
- 計画的な労務管理と確実な勤怠管理 :有給消化の義務化と残業規制の対応のため
中小企業が働き方改革を成功させるには「ITシステムの活用」「組織対応への移行」がポイントです。現在も働き方改革に対応すべく、努力されている方も多いでしょう。働き方改革は日本にとっても中小企業の方にとっても大きな試練です。このため、会社でみんなが努力するだけでなく、視野を広げてうまい解決策を見つけましょう。
もちろん、効果的なITツールの導入や業務プロセスの構成について、外部の専門家と相談するのも一つの手かもしれません。弊社ではそんなITツールの導入などのコンサルティングを行っています。中小企業様で働き方改革に適用した業務効率化をお考えの場合は、まずお問い合わせください。